NO.101
モルモット観察日誌
 
 
10/29
 
散歩中,素晴らしい拾い物をする.
並はずれた自己治癒能力を持つ半妖である.
 
その夜のうちに,臨床実験を行う.
痛覚は常人と同程度のようだが,軽い傷ならばたちどころに治る.
頸椎を圧迫し,昏睡状態にすると,
形態を変え,手出しのできない状態となった.
翌日の昼近くに目覚める.
 
 
10/30
 
食料品と衣類を買いに出て行った.
恐らく,逃げだしはしないだろう.
順応の早さは驚異に値する.
 
 
10/31
 
ハロウィン.
死人が蘇るより,この男の身体は愉快だ.
当分飽きる心配はない.
 
 
11/1
 
あまり器用とはいえないものの,マメな性格のようである.
日に日に屋敷内が綺麗になっていく.
指示すれば素早く対応する.
奴隷体質なのだろうか.
 
 
11/2
 
ナハリで仕事を始めるらしいので,俺も向かう.
しかし当面は別の国で遊んでいるようだった.
退屈をしのごうにも酒場がないようで,つまらない.
 
 
11/3
 
内務大臣が挨拶に来る.
どうやらマメな国風のようである.
奴に合っているのではないか.
 
 
11/4
 
油臭い.
自室に籠もって何をやっているのか.
 
 
11/5
 
スパイなどと怪しまれるのも癪なので,国へ入国挨拶に行く.
やはり俺には合わない国風のようだ.
平和という形容がふさわしい.
 
 
11/6
 
柳葉を採取する.
別段通常のそれと変わらないよう思われる.
苦い.
 
 
11/7
 
看護服を着せる.
嫌がる様子が見れないと面白くないので,
上衣のみの着用を許す.
 
 
11/8
 
徐々に来客が多くなってきた.
騒がしい.
勝手に着替えたので仕置きとする.
 
 
11/9
 
幻術の話を聞く.
酒池肉林ができるというなら,一度かかってみたいものだ.
しかし,現実ですれば早い話だと思う時点で,
俺は幻術の効きにくい体質なのだろう.
 
 
11/10
 
札束を渡される.
以前に治療費とうそぶいた,莫大な借金の一部返済のつもりだろうか.
どうせ死ぬまで手放す予定はないのだが.
 
 
11/11
 
昔,獏と呼ばれていたらしい.
腹を抱えて笑う.
 
 
11/12
 
酒が切れたので,買い出しに行く.
食料品などは概ね任せているが,
酒と薬剤だけは俺自ら選定しなければならない.
 
 
11/13
 
鳥臭い.
何かペットを飼い始めたようだ.
特に利益も不利益もあるとは思われない.
ゆえに,隠れてやっている間は,咎めるつもりはない.
 
 
11/14
 
とはいえ,隠しごとをされている状態はどうにも苛々するものだ.
ゆえに,八つ当たりを受けても奴の自業自得というやつだ.
 
 
11/15
 
アルバムを捲り,少年の日の思い出に浸っていたようだったので,
若返りの薬を飲ませてやる.
逃げようとしたが無駄なことだ.
 
 
11/16
 
近頃は,めっきり寒い.
暖炉の火を敬遠していたようだったが,
やはり火の回りは早いのだろうか.
 
 
11/17
 
来客あり,怯えている様子.
聞かれたくない話なのか,俺が怒ると思っているのか,
外に出て話をしている.
来客は俺のところにも来る.
 
 
11/18
 
黒い看護服(女用)を隠れて所持しているのを発見する.
先日の一件で,新たな喜びに目覚めたのだろうか.
 
 
11/19
 
抵抗の末,着用.
ズボンと和服を駄目にしてしまった.
まあ,借金に足すだけだ.
 
 
11/20
 
ナハリ入国.
初日から活発に動き回っている.
ちょこまかとネズミのようだ.
 
 
11/21
 
無事,軍務に就いたようだ.
そういえば紹介状は俺の机に置いたままだが,
いらんのなら燃やしてしまうか.
 
 
11/22
 
どうやら数日にわたり,引っ越し蕎麦を配っていたらしい.
知らんところで何かと色々やっている,
そのバイタリティには呆れる.
 
 
11/23
 
神経系の毒を注入する.
腐っても植物の妖怪だ,死ぬことはないだろう.
生きていたので褒美をやる.
生涯俺に尽くすために,殺しても死ぬな,カラン.
 
 
11/24
 
麻痺状態が抜けきらないようで,臥せていた.
病人食を作ろうかとすると,台所に見知らぬ食材などが増えていて
少々面食らった.
 
 
11/25
 
今度は老人を部屋に置いていた.
意味が分からないので,見なかったことにする.
一週間以上置くようであれば,蹴りだすだけだ.
 
 
11/26
 
唐突に,泣きついてきた.
俺が怒ることを懸念していたようだが,
怒る理由は見当たらない.
それに俺の知らんことで泣いている相手を更に苛めても,
興がそそるわけがない.
酒を呑ませ、大人しく寝かせておく.
だが日課は欠かさない.
 
 
11/27
 
チェスの相手をさせる.
何度目かでルールは概ね呑みこめたようだ.
しかし何度やってもチェックメイトを「王手」と言うので
王手と口にすれば負けとする,という特別ルールを追加する.
 
 
11/28
 
何やら同僚などに,俺の話をしているらしい.
どうせ愚痴を零しているのだろう.
変人と思われようが,変態と思われようが,
俺にはどうでもいいことだ.
 
 
11/29
 
年賀状を書いていいか,と相談される.
至ってどうでもいい話なので,適当に承諾する.
倭人とは挨拶がやたらと好きな民族らしいが,
どうやら本当のようだ.
 
 
11/30
 
会議だか交流会だかに行ってきたようだ.
どうやら人間関係など上手くやれているようで,
生き生きとしている.
時折不安定になるものの,精神面は基本的には良好のようである.
 
 
12/1
 
庭で焚き火を行う.
柳葉の匂いが芳しい.
その火で芋を焼いて食っていた.
半分共食いだ.
 
 
12/2
 
退屈しのぎにメイド服を着るよう指示したところ,
自身で刺繍して作ろうとしているらしい.
熱心に本を読んで勉強している.
 
 
12/3

腐った臭いがする.
呪竜が跋扈しているようだ.
何かを思い出す.


12/4

メイド服が完成したらしい.
あつらえたように似合っている.
しかし,指定していないリボンなどは奴の趣味か.


12/5

オイラン,というのか.
女芸者の格好をしたCDを発見する.
...
やはり,昔から変態だったようだ.


12/6

たまには実験なしに,夜の相手をさせる.
どこか嬉しそうだったのは気のせいか.


12/7

何となくスカートをめくってみると,
ふんどし,というものを履いていた.
よくわからんが興醒めだ.
女装するならばきちんと女物で統一するよう指示する.


12/8

たまに仕事で外出すれば
大雪で路面が凍結し,帰れなくなった.
仕方なく連絡を入れると,アヤキと二人で買い物をしているようだった.
しかも女ものの下着をだ.
どこからどう見ても,乙女二人である.


12/9

凍えて帰れば,ビーフシチューを用意していた.
気が利く.
苛つきをぶつけるような気も殺がれた.


12/10

ふと,扉が開いていたので入ってみると
机の上に日記が開いていた.
下らないことが沢山書いてある.


12/11

常備用の酒を忘れて出てしまった.
寒い.


12/12

国内交流会というものが催される.
あまり興味はなかったが,酒が呑めると聞いて
深夜に会場へ向かった.
どうやら開始からいたらしく,さすがに疲れたのか,途中で倒れたので
まだ少し呑み足りなくはあったが,そのまま担いで帰る.
それにしても,一番の収穫は,キーミ王より譲渡された
性転換飴である.
実に興味深いものを手に入れた.
いつ使うか.


12/13

昨晩運んでやったことの愚痴のついでに,
間食制限をしろと指示をする.
俺に食事に関して小言を言うこともあるが
それ以上にどうみても間食が多すぎる.
たまには医師らしいことも言わねばならん.


12/14

交流会にて持ち帰っていた酒を呑む.
倭酒は味わいが深い.


12/15

どうにも,様子が少しおかしい.
交流会以来だろうか.
何となく,何がきっかけかは予想がつく.
だが,だとしたら,やはりそうなのだろうか.


12/16

考え事をしていることが多い.


12/17

温泉に連れ出される.
そわそわとして何を企んでいるのかと思えば,
外で,誰かに見られるかもしれない状況で
キスをしたかったらしい.
そして,酔わせて問いただしたところ,
やはり俺に惚れているらしい.
言葉は濁していたが,態度は饒舌だ.
しかし俺に惚れるなど,マゾヒストの極みといえる.
最近は,「優しいところもある」などと言うが
何もしないか,あるいは気が向けば頼みに応じてやるか
それぐらいで,「優しい」などと勘違いをするのだ.
感覚が麻痺しているのか.


12/18

アヤキに,嫉妬しているそうだという話をすれば
大笑いをした.
俺も笑いたいところだが,何故だかあまり笑えない.


12/19

クローゼットの中に,フリルのドレスを発見する.
どうやら隠しているらしいが,クローゼットの中に堂々と入れていて
何を隠したことになるのか,不明である.
それにしても,どれだけ女装願望が強いのか.
そんなに女になりたいなら,してやろう.


12/20

性転換キャンディなるものの
成分を抽出し,吸収しやすい液状としたものを注射する.
おそらく魔法薬なのだろう,
理解のできない成分も検出される.
数時間後,女体化に成功する.


12/21

綿密に調べてみた限り,完全に女体のようである.
女の体は弾力があって面白い.


12/22

引篭もっている.
女の姿のまま外に出るのは恥ずかしいらしい.
男が女装するよりは,恥ずかしくないと思うのだが.


12/23

やっと出てきたようだ.
愚痴を言ったり頬を赤らめたりと,いつにも増して煩い.
夜には湯たんぽ代わりに傍に置いて眠る.


12/24

どこからかクリスマスについて学んできたらしい.
プレゼントといって,ケーキやシャンパンを置いていった.
早速呑む.